映画『夢見るシラノ・ド・ベルジュラック』
私はこれをスターチャンネルで一度観ました。
たしか、未公開作品シリーズというのをやっていたのを観たのだと思います。
この映画は日本では公開されていないしDVD化もされていないし、ほとんど話題にならなかった目立たない作品です。
それがなぜかツボにはまって自分にとって一生忘れられない映画になってしまいました。
作品はオーディションで劇団員になった男性の内面と外面が少しずつ変化していく様子を描いたものでした。
主人公の男性は最終的に主役「シラノ・ド・ベルジュラック」の座を射止めます。
ストーリー的には、役所広司が主演した『Shall we ダンス?』に似ていると思います。
主人公ピーターは目立たない普通の会社員でした。
趣味もなく友達も少なく、最近恋人にも振られ、話し相手はときどき訪ねてくる妹(お姉さんだったかもしれません)ぐらいしかいません。
真面目な勤務ぶりに上司も彼を昼食に誘ってあげようと思うのですが、いざ誘う段になると、たぶん誘っても楽しい会話はできないだろうと思い躊躇してやめてしまうほどピーターは面白みのない男でした。昼食の時間、ピーターはいつも事務所に1人でした。
ピーターは徒歩で自宅から会社に通勤しているのですが、途中、街中の交差点に掲示されているポスターが気になってしょうがありません。
それは街で近く公開予定の劇「シラノ・ド・ベルジュラック」の劇団員を募集するというものでした。
ピーターは行き帰りに何度もポスターをのぞいては、気持ちを決めきれずに通り過ぎてしまうのですが、ある日、意を決して、劇団員募集のオーディションに申込をします。
オーディションの結果はさんざんでしたが、プロデューサーがなぜかピーターを気に入り、入団を許可します。
そこから、ピーターの生活に変化が生じます。
演技はいつまで経っても上手になれませんが、夜中に突然劇団仲間に押しかけられたり呼び出されたりして、今までの規則正しい生活がメチャメチャにされてしまいます。
今までのように明日は6時に起きなければいけないので夜は10時までに寝るというわけにはいきません。夜中だろうが明け方だろうが、ハチャメチャの劇団仲間に振り回されるのですが、ピーターはそれを不思議に苦痛に感じません。
生身の人間の本音と本音がぶつかり合う中で妙な居心地の良さを覚えたのでしょう。
ピーターの内面が変わってゆくにつれ、恋心もめばえ、そして主役の座まで獲得するというオマケまでつきます。
日本では話題にのぼらなかった作品です。
でも、なぜか私の心にずっと残っています。
なぜだろうと考えてみました。
毎日規則正しい生活をするのもよいかもしれませんが、夢もなく刺激もなく毎日を送っていると、決まった時間に寝て、決まった時間に起きること自体が人生の意義みたいなことのようになってしまうのではないだろうかという自分への警告だったのかもしれません。
最後にゲーテの言葉をひとつ。
☆「恋にも迷いにも縁のきれた人間は墓に埋められてしまうがよい」
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